N=1候補とは、プロダクトの形がまだ定まっていない段階でも、コンセプトに強く共感し「絶対実現してほしい」「絶対買う」と言い切り、実現のためなら協力を惜しまない人のことだ。こうしたエヴァンジェリスト・カスタマーを見つけられるかどうかが、新規事業の成否を大きく左右する。たった一人の幸せを本気で追いかけると、プロジェクトチーム全体に「原体験化」という火がつき、推進力が生まれる。
そのような顧客に出会うには、先に顧客の現状を深く理解しなければならない。有効なアプローチは「観察・体験・傾聴」の三つだ。「観察」はエスノグラフィック調査のように、顧客の日常に入り込んで行動をつぶさに見ること。「体験」は自分がユーザーになったつもりで、一連の動作を実際に経験すること。「傾聴」はアンケートにとどまらず、継続的な対話を通じて建前の裏にある本音を引き出すことだ。
顧客インタビューで得られるのは、顧客が自覚している部分だけだ。しかしイノベーションに繋がるインサイトは、無意識の感情変化や意思決定の奥に潜んでいる。実際のアクションの前後も含めて細かく観察し、「困っている様子」を見落とさないことで、潜在ニーズを推察・定義できるようになる。