「蓋を開けずにどんぶりの中身を食べてください」という問いに、多くの人は「ひっくり返す」「割る」と答える。しかし1%の人は「そのまま食べる」と答える。「器は食べられない」という既成概念を外せば、「食べられる器」という前提が生まれ、自ずと答えが見えてくるのだ。イノベーションとは、この既成概念を崩した先にある未来を創ることに他ならない。
1962年、ジョン・F・ケネディ大統領は「We choose to go to the Moon」と宣言した。当時、月面着陸は技術的に不可能とされていたにもかかわらず、10年後の実現を高らかに宣言したことで、夢物語が明確な目標に変わった。この「ムーンショット」という概念は、困難で莫大なコストがかかるが解決されたら社会に大きなインパクトをもたらす目標を掲げることを意味する。大胆な未来を心に誓うことが、イノベーションの起点となる。
革新的・破壊的イノベーションは、常識の延長線上には存在しない。持続的・漸進的イノベーションは既存の積み上げで達成できるが、人々の生活を激変させるイノベーションには、既成概念そのものを疑う力が必要だ。「井の中の蛙」にならないよう、井戸を広げ常識の外に飛び出す思考習慣を身につけることが、本章の核心である。