「新規事業に挑む!」と決意した矢先に、社内で妨害者が現れることは珍しくない。単に仕事が増えるのが嫌だという理由で反対する人、リスクを憂う人、様々だ。社内の意見調整は大切だが、ときにはブルドーザーのように強行突破的に推進する覚悟も必要である。末期がんの患者さんたちの苦しみを和らげる事業を進めているとき、社内調整に何年もかかっていては顧客候補の方々が次々と亡くなっていく——そのような切実さを持って推し進める場面もある。
しかし、だからといって対話を蔑ろにしていいわけではない。すべての関係者を仲間にする必要はないが、足を引っ張る人がいなくなれば十分なこともある。そのためにも、相手の視点に立ち、お互いの立場・価値観・判断基準の違いを理解し合い、擦り合わせるための時間を積み重ねることが必要だ。「イエス」と言わせることを目的とした「説得」では相手は頑なになるだけ。あくまで対話である。
「あなただから任せる」「あなただからついていく」と言ってもらえるかどうかが、巻き込みの本質だ。そのためには、普段から目の前の既存事業で成果を出し、人柄を磨いていることが最低限の前提となる。強力な推進力と丁寧な対話の両輪を回すことが、イノベーターとしての真の姿勢といえる。